変成譚

HENJÔ-TAN

Transfiguration β
-for Flute & Violin-


(2008)

[ca 18 min.]



紀州・道成寺とその周辺に伝わる佛教説話としての安珍/清姫伝説と、
その古層に横たわる宮子姫(髪長姫)伝説、
更にはその後日譚としての能「鐘巻」「道成寺」に至る、
重層する伝説群に触発された作品。

三重の序破急に準えた、
非対称な九つの段から成り、
求心的・不可逆的に終局へと展開する、
音による変成と昇華の物語。

※なお本作には、能「道成寺」を象徴づける諸要素が、変形を伴いつつ引用・踏襲されている。 


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フルートとヴァイオリンによるデュオ作品〈変身譚/変成譚〉は、
“変容 (Transfiguration)”を潜在的テーマとした一双の新作。
ギリシャ=ローマと日本の民間伝承・古典文学に現れる、
東西二様の男女一対の物語に触発されたものである。

男/女、火/水、谺/影、水仙/櫻花…

様々な次元で対の象徴性を帯びたこれら二作は、
それぞれ独立した作品であると同時に、
喩えば無限に互いを映し出す歪んだ合わせ鏡のように、
相互に参照・引用・註釈しあうディプティーク(二連画)でもある。

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[演奏記録]

2008年12月19日 神奈川県川崎市 川崎能楽堂 (Fl:ニコリーヌ・ピエルー Vn:佐藤一紀) 
2009年1月26日 京都市 京都芸術センター講堂 (Fl:ニコリーヌ・ピエルー Vn:佐藤一紀) 

 

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