ゆめぢのうた

YUMEDZI no UTA
〜ソプラノとピアノに依る竹久夢二詞花集(アンソロジイ)〜
Takehisa Yumeji Anthlogy for Soprano & Piano
ある時は、歓びなりき。
ある時は、悲しみなりき。
いまは、
十字架。
—竹久夢二《戀》

no.1:絲車 ito-guruma
no.2:青い窓 aoi mado
no.3:山をうたふ yama wo utau
no.4:なぎさ nagisa
no.5:花のゆくえ hana no yukue
no.6:めんない千鳥 men-nai chidori
no.7:月のうた tsuki no uta
no.8:雪の扉 yuki no to
no.9:朝の鐘 asa no kane
この作品は、ソプラノ歌手・吉川真澄さんと「グラントワ」の委嘱に応え2020年1月に作曲した、全9曲からなる連作歌曲である。竹久夢二の詩といえば、たおやかな女性・いたいけな子どもの姿を柔らかい筆で描く淡い絵と相まって、声にならなかった言葉を代わりに優しく哀しく歌う、美しくも感傷的なものとして受け取られ、愛され憎まれて来ただろう。童謡風に民謡風、わらべうたにおまじない、かと思えば俄かに格調帯びる現代詩…と一見ひと懐っこいようで時折ギラリと眼が光り、妙に気まぐれで投げやりな無頓着さが漂うどこか毀れた詩世界。今あらためて虚心坦懐に潜り込んでみると、その底には、同時代へのやるせない絶望にふるえつつ、どんな哀しみも苦しみも弱さも脆さも風に晒し土に重ねて生き延びる、図太いまでに逞しい民の歌心が息づいている。日本歌曲が風に運ばれいつのまにか土に染まっていく、まったく不思議な連作歌曲集が生まれて来た。
 
[共同委嘱]
吉川真澄&島根県芸術文化センター「グラントワ」

 

[初演]

2021年12月5日 大阪府岸和田市 自泉会館 ソプラノ:吉川真澄 ピアノ:水戸見弥子